月光町 フクロウものクラブ
アオバズク
 1.アオバズクについて(Wikipedia)  3.東京都青市での繁殖状況
     (補足)日本に生息する亜種  4.野鳥カメラマン問題
 2.アオバズクの1年(東京多摩西部での観察)  5.猫問題
アオバズク    東京都のレッドリストでは、西多摩地区で絶滅危惧Ⅱ類(VU)とされています。


 
1.アオバズクについて(補足)
  
 日本に生息する亜種
 König & Weick(2008)によると、日本に生息するのは以下の2亜種とされています。
 亜種アオバズク Ninox scutulata japonica  夏鳥(一部は留鳥)九州以北に生息
 亜種リュウキュウアオバズク Ninox scutulata totogo  留鳥 奄美大島以南の南西諸島に生息
 上の2亜種は、鳴き方が少し違うという説もありますが(例えばKing 2002)、同じもの(シノニム)と考えることもあります(König & Weick 2008)。 Lin(2013)は、2つの亜種が遺伝子レベルでの違いが僅かであることを明らかにし、2亜種に分類するのは間違いだとしています(台湾本土で繁殖しているリュウキュウアオバズクは、別亜種としても良いくらい遺伝的に分化しているそうです。)。
 日本鳥類目録改訂第7版にはチョウセンアオバズクN. s. macroptera なる亜種も記載されていますが、世界的には今では使われていない亜種名です。
 
【重要】2014年7月27日追記
 2014年7月、IUCNレッドリストにおいて、Ninox scutulata が、Ninox scutulata, N. japonica, N. randi and N. obscura の4種に分割されました。
 これまでも、ClementsIOCなどの鳥類リストでは、亜種アオバズクと亜種リュウキュウアオバズクを含む3亜種を独立した種Ninox japonicaと分類していました。これは、主に鳴き声の違いからNinox scutulata を3種(Ninox scutulata, Ninox japonica, Ninox randi)に分割したKing(2002)の考え方を採用したものです。
 IUCN(=BirdLife International)では、更なる研究が必要としてKingの説を採用していませんでしたが、del Hoyo and Collar (2014)に基づいて、4種に分割することを決めたようです。

今後、日本のアオバズクは、Northern Boobook(Ninox japonica)とする考えがさらに広まるでしょう。
 亜種アオバズク Ninox japonica japonica
 亜種リュウキュウアオバズク Ninox japonica totogo (近い将来、亜種アオバズクに統合か?)
   
(2014年7月 加筆修正)    
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2.アオバズクの1年(東京多摩西部での観察)
   
 渡来

4月末から5月始め、アオバズクは各営巣地に一斉にやって来ます。
3羽以上観察されることもあります。前年に巣だった雛も帰って来るのでしょうか?
 
当初は営巣林に執着せず、近くのより大きい樹林をねぐらにすることも多いです。
 
渡来直後から、洞に入って巣の確認をする様子も観察され、巣に中でオスが鳴くこともあります。雌雄で並んでとまり、小さな声で鳴き交わす光景も見られます。
 
 【♪】鳴き声(さえずり)
 営巣地に戻って来たアオバズク
 つがい形成

渡来直後から求愛給餌や交尾が観察できることもありますが、雌雄で鳴き交わしながら個々に獲物を採ることもあります。

 【♪】雌雄で鳴き交わしながら獲物を採る

テリトリーに他のアオバズクが侵入した際には、鳴きながら追い出したり、雌雄で一緒に鳴いて存在をアピールします。
一方、侵入個体と鳴き交わした後、侵入個体を排斥しないこともあります。

 【♪】他のアオバズクの声に反応して雌雄で鳴く


 アンテナにとまって鳴くアオバズク
 アオバズクの声のスペクトログラム
 上の音声のスペクトログラム。 雌の方が雄より周波数が高くなる傾向があるが、声だけで雌雄を判別するのは難しい。

5月中旬になると、雄から雌に食物をプレゼントする求愛給餌が盛んになり、交尾も多く観察されます。

 【♪】雄から雌へ食物を渡す時の鳴き声
 (雄:ホッホッ 雌:フーーー)

 【♪】交尾

つがいの相手のいないアオバズクもよく鳴きますが、ほとんど鳴かずに密かに生息する個体もいるようです。
 雄(左)から雌(右)へ食物を渡して見つめ合う
 産卵
 
巣の中では雌が抱卵し、日中は雄が巣穴を監視します。

抱卵中の雌も自分で食物を採りに行きますが、通常20~30分で巣に戻って来ます。

抱卵期の末期になると、雄が巣の中を覗きこむ行動が見られます。雛が生まれたかどうか確認しているのでしょうか?
 巣を監視する雄(日中は目を閉じている時間帯も多い)
 観察者を警戒する雄
 雛の誕生

雛が生まれ、雛が少し大きくなってから雌親は巣から出てきます。日中は雄親と同じように巣の前で監視を行いますが、通常は雌親の方が巣の近くにいます。

 巣の近くにとまる雌
 趾(あしゆび)で掴んだ獲物を巣に運ぶ親
 
 巣内育雛期後半、食欲旺盛な雛に食物を与えるため、
 行動開始時刻も早くなる(7月13日,19:19)
 
 雛の巣立ち
 
巣立ちは7月中旬から8月中旬で、夜のはじめや早朝に行われることが多いようです。


 【♪】巣立ち雛の声


雛は巣から飛び立って巣立ちします。フクロウの雛のように地面に落ちることはありません。


巣立ち時は、まだ幼綿羽が多く残っていて、尾羽も十分に伸びていません。


親が食物を持ってくるのを待つ時は、鳴きながら、頭を回すように盛んに動かします。


巣立ち間もない頃は、親子一緒にねぐら入りし、親は日中も巣立ち雛に寄り添って見守ります。

 【♪】巣立ち雛をねぐらへ誘導する時の親の鳴き声



 巣立ち。 巣の洞から出てきたところ(19時過ぎ)
 
 巣立ち翌朝の雛(左)と親(右)
 
 巣立ち翌朝の雛。下に見守る親の姿も写っています。
 
 巣立ち翌朝の雛。 左奥に親。
 幼羽はバフ色の羽縁が若干目立ちます。尾羽の先端部の淡色部の幅が広いという特徴がありますが(深井 2016)、この写真では分かりません。

 
 成鳥の風切羽の換羽は、雛の巣立ちの時期と前後して始まるようです。
 
巣立ち後2週間もすると、巣立ち雛(もう幼綿羽はないので、幼鳥と呼ぶべきかも)は親から食物を貰うだけでなく、自分でも食物を採るようになります。姿も親とそっくりで見分けが難しくなってきます。 

巣立ち後1ヶ月の時点では、親と別れて行動し、食物も全て自分で採るようになっています。幼鳥同志で共に行動することも多いようです。巣立ち間もない頃のように、リーリーと鳴いたり、首を回す仕草を行うこともあります。
 獲物を捕えた幼鳥(巣立ち後18日目)
 渡去
 
秋になると、時々鳴き声が聞こえますが、アオバズクの姿はだんだん見られなくなります。

 【♪】秋にさえずるアオバズク

10月上旬まではアオバズクが観察されることがあります。その後いつ頃南の国へと旅立つのかは分かりません。
10月中旬にはフィリピンで確認されるらしいので、10月に移動しているものと思われます。
      
       
      
    アオバズクの様々な鳴き声をこちらで聞くことが出来ます。
      
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3.東京都青栴市での繁殖状況
  
青栴市内で10つがい程度の繁殖状況を継続調査しています。その結果はこちら(更新作業中)。  
  
アオバズクの繁殖状況の継続調査は大分市でも行われていました。
大分市では、1995年には少なくとも十数箇所あった営巣地が、2011年には3か所しか確認されなかったそうです(2011年7月21日付、読売新聞大分版の連載記事「滅びゆく生物たち」より)。
 
青栴市でも営巣地の消失が確認されています。今後の動向が注目されます。
 
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4.野鳥カメラマン問題
 
 アオバズクに限らず、フクロウの仲間は人気があり、多くのカメラマンに狙われています。しかし、東京都などの多くの自治体のレッドデータブックでは、フクロウ類の生存を脅かす要因として、カメラマンの撮影行為を挙げています。

 ここでは、野鳥カメラマンがアオバズクに過大なストレスを与え、その生息や繁殖に影響を与えていることについて考えてみます。

 ひとたびアオバズクの営巣地が知られてしまうと、カメラマン同士のネットワークやインターネットを介して情報は直ぐに広まり、大挙して野鳥カメラマンが押し寄せることになります。例え一人一人が節度を守って撮影したとしても、アオバズク側から見れば、常時多くのカメラマンにレンズを向けられていることになります。

 その結果、次のような問題が生じると考えられます。

 1 日中、アオバズクが十分に休息できない
   目をパッチリ開けたアオバズクの写真を撮るため、わざと大きな音を出したり、石を投げたりして眠たそうなアオバズクを起こす人もいるようです。
 2 巣内の雛への給餌が行われなくなる
   愛知県で雛が全て死んでしまった事例があります。
 3 雛の巣立ちが早まることによる、巣立ち時の事故の増加
 4 撮影者を避けて木にとまる位置が高くなることにより、上空からの捕食者に狙われやすくなる
     3と4は横浜で検証済みです。カメラマンから離れるため、十分に成長していない雛が巣立ちを試みたり、日中の休息位置が木の高い場所に変化したりするそうです。カメラマンが多い営巣地では、巣立ち雛が地上に落下するケースがあるようですが、これはカメラマンの影響が疑われます。
 5 猫やカラスにアオバズクの巣やとまり位置を知らせることになる
猫やカラスはアオバズクを襲います。

 筆者もアオバズクの記録写真を撮っていますが、次の条件下で撮影しています。

・他の撮影者や観察者が誰もいない営巣地
・道路や通路で日常的に人の往来がある場所で撮影
・営巣林内での撮影回数は1営巣地につき年1回のみ
・撮影時間は数分程度
・ストロボ・照明は使用しない

 したがって、素晴らしい写真は撮れませんが、記録としては十分だと思っています。

 恐らく野鳥カメラマンは、私に対して「お前も撮影しているのだから同類だ」と言うのでしょう。でも、アオバズクの立場になって考えてみてください。連日朝から晩まで大勢のカメラマンに囲まれるのと、年1回くらい一人の撮影者に数分間撮影されるのとでは、全く状況が異なるということが分かっていただけると思います。

 残念ながら、モラルに欠けるカメラマンは年配者が多いようです。本来なら若い人の模範となるような行動をとって欲しいものですが…。

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5.猫問題
 
巣立ち雛は(時には成鳥も)、しばしば猫(野良猫、飼い猫)に襲われ、命を落とします。
アオバズクだけでなく、フクロウの雛が猫に殺される事例も多く発生しています。
身近にコノハズクを観察できることで有名だった青森県三戸町でも、猫に襲われてコノハズクは絶滅したと言われています。


野鳥・野生動物にとって、猫は深刻な脅威となっています(例えば、Loss 2013)。
人間は猫を可愛がることにより、心が和んだり、癒されたりします。
しかし、その代償として、あまりにも多くの野生動物の命が奪われています。


野鳥が猫に襲われるのは、弱肉強食の自然界の摂理だという人もいます。
しかし、それは間違いです。
猫は人間がヤマネコを家畜化して造りだしたペット動物であり、野生動物ではありません。
自然界の摂理ではなく、人間が自らの楽しみのために間接的に野鳥を殺しているだけのことです。


この猫問題、いわゆる自然保護団体で取り上げられることはありません。全国的な組織である日本自然保護連盟、日本野鳥の会などや、地域に密着した活動を行っている小さな団体でも。

猫問題に取り組めば、猫好きの支援者の支持を失うことを恐れているのでしょう。
自然保護団体は、野生動物を守ることよりも組織防衛の方が大切だと考えているようです。

(2017年9月追記:猫問題が少しづつ取り上げられるようになってきました。しかし、島で問題になっている、野良猫が問題になっているなどと、問題が矮小化される傾向にあるようです。)

アオバズクだけでなく、野鳥や野生動物を守るため、猫を捨てたり、放し飼いにするのは止めましょう。

(2014年7月 記す) 
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